外国人労働者の権利はどうなっているか
日本の労働関連法規(労働組合法、労働基準法、最低賃金法、労働安全衛生法、労災保険法、男女雇用機会均等法、派遣労働法など)は、当然のこととして、外国人労働者に対しても日本人労働者と同じように、平等に適用され、労働保護の恩恵をうけることになっている。
それでは、なぜ、外国人労働者には日本人労働者と比べて、権利侵害が多発しているのであろうか。その要因として次のことが考えられる。
@外国人の場合、言葉の障害から、労働関連法規の内容を知らされていないか、また存在すら知らないことが多い(ILOの受け入れ・送り出し相互協定のモデルでは、出国前に保護規定の内容を知らせることを義務づけている)。
A間接雇用が多数を占めるようになっており、雇用関係に仲介する者が存在し、全く保護内容を知らせないどころか、労働条件で文句をいったりトラブルをおこすと解雇すると脅すケースが多い。
B外国人労働者の場合相談する人もなく、また入管法条の法的地位が不安定なものも多く、声を上げにくい状況にある。さらに「通報」(公務員には不法就労などの入管法違反があれば入管・警察に通報する義務がある)されると困るとして声をあげないケースが多い。しかしはっきりしておきたいことは、労働関連法規違反で、労働基準監督署、都道府県の労働局、ハローワークに訴えても、決して通報されないことになっている。
このような困難で孤立した状況にあって、外国人労働者の権利をまもり、権利侵害があればそれを回復するにはどうすればよいのであろうか。 第一に、労働保護関連法規の存在とその内容を外国人労働者にくまなく知らせる取り組みが必要である。大きな作業をともなうが、保護法規の内容と解決方法(権利実現方法)について、日本に多くいる外国人労働者の母国語で(韓国語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、英語、タガログ語、ロシア語など)、案内・紹介する取り組みが求められている。
第二に、なるべく身近に相談できる団体、地域労組(local union)=合同労組、協会、コミュニティー(母国商店、母国食堂など)を組織し、事件が発生すると組合メンバー、弁護士が始動できるネットワークづくりを進めるべきであろう。
第三に、日本政府に対して、不法就労の多数の存在を国際競争力強化に悪用する政策をやめること、事業主・使用者に保護法規をまもるように指導を強化し、違反すれば罰し事業停止処分できるように労基法を改正すること(近年、法令をまもらない事業主が規制緩和でつくられているような気がする)、労働条件をまもる取締り・監督行政を強化することを強力に働きかけることである。
(大阪経済法科大学教授 村下 博)